むし歯は細菌による感染症だと言われています。口の中にはプラークと言って細菌の塊が歯の周囲についています。このプラークの中には約300種類の細菌が住み着き、1gのプラークの中に1億個の細菌が住んでいると言われています。この中でむし歯に関係する菌は2種類です。ストレプトコッカスミュータンス菌(SM菌)とラクトバチラス菌(LB菌)です。 SM菌はお母さんから感染し初期のむし歯を創る菌です。SM菌は砂糖などの発酵性炭水化物を食べ粘着性物質(グルカン)を分泌し歯の表面に強力に付着します。砂糖を多量に摂取すると乳酸と酸を放出しエナメル質が溶け出します。 LB菌はむし歯の進行に関係し、SM菌によって脱灰(歯が溶け出すこと)されたあとに繁殖し、むし歯を進行させ、充填物、補綴物のマージン(歯と詰物との境目)に生息しています。飲食回数が多い人、糖濃度の高い飲食物を摂取している人は菌数が多くなります。 虫歯菌を減らすには先ず歯磨きです。しかし、歯ブラシを使っただけの歯磨きではどんなに磨いても20~30%の磨き残しが出来てしまいます。これ以上磨き残しを少なくするには、フロス、歯間ブラシを使った歯磨きが必要ですが、これらを使ったとしても3~5%の磨き残しが生じてしまいます。プラークを完全に落とすには歯科衛生士に機械を使って落としてもらわないとなりません。3ヶ月に一度、歯の清掃をしてもらうとよいでしょう。 そしてキシリトールの摂取もむし歯菌を減らすには効果的です。キシリトールは天然素材の甘味料で野菜や果物など自然界に存在します。キシリトールはSM菌の発育を抑えプラークが着き難くなります。従って食事の後にキシリトール入りのガムまたはタブレットを食べるとSM菌を減少させることが出来ます。 |
|
---|
むし歯になる原因には、むし歯菌の存在、唾液の質、唾液の量、食事の回数、歯の磨き方、フッ化物を使用しているかなどがあります。 自分の口の中にむし歯ができたということは、このような原因が複雑に絡み合ってできたということになります。したがって歯を徹底的に磨けばむし歯にならないかというとそういうことではありません。食事の回数が多かったり、砂糖の摂取量が多いとむし歯になります。逆に歯磨きはほとんどしないが虫歯が一本もないという人もいます。唾液の質が良くて中和力が強く、唾液量の多い人はむし歯になりにくくなります。またこういう人は食事の回数が少なくよく咬んで食べている人が多いです。 むし歯のところを削って詰め物やかぶせ物をするとこれで治療が終了したと思いがちですが、一度削って詰め物をしたり、かぶせ物をした歯は自分の歯より数倍むし歯になり易くなるため、むし歯を再発することになります。今度は神経を取らなくてはならなくなってしまいます。いちど削った歯の寿命はおおよそ50年といわれています。80歳で20本自分の歯を残すためは一度口の中の検査を行い自分の口腔内の現状を把握し、正しい予防法を知ることが大切です。 実際に、唾液検査を行うと、砂糖の摂取量の多い人、食事の回数の多い人、虫歯菌の多い人、唾液量の少ない人など様々です。砂糖の摂取量は一日30gが目安となります。一度食事をしたら、次の食事をするまで2~3時間空ける必要があります。食事をするとpHが下がり回復するのに20分位かかります。さらにエナメル質の再石灰化(歯を修復する働き)が行われるのに40分位が必要となります。何か食べたくなってもつぎの食事をするまでお茶や水で済ますようにすると、ダイエットにもなり身体にはよいのではないでしょうか。身体全体の栄養バランスを考えて、規則正しい食生活を行えば、自然にむし歯予防ができます。 |
|
---|
歯の表面は、エナメル質とセメント質で覆われています。セメント質の部分は歯肉の中に入っていて通常、口の中を鏡で見ても確認することはできません。鏡で見える部分がエナメル質と呼ばれるところです。乳歯ではお母様のお腹の中にいる時からこの部分が造られます。永久歯では12才ころまでにエナメル質が作られ萌出することになります。歯槽骨内でエナメル質が造られるときは先ず蛋白質の繊維ができそこにカルシュウムが沈着してできます。 萌出したばかりのエナメル質は幼弱で軟らかくむし歯にかかりやすい状態ですが、唾液や神経と呼ばれる歯髄の血管を通して運ばれてきたカルシュウムが象牙細管を通って補給されるようになり、エナメル質が成熟していきます。 食事をするとエナメル質表層のカルシュウムは溶け出し、食事が終わると唾液からカルシュウムが補給され再石灰化(歯を修復する働き)が行われエナメル質は元どおりに修復されます。しかしこの時唾液中にカルシュウムがなかったり、唾液が酸性だとエナメル質は修復されないことになります。 エナメル質中のアパタイトを構成するものには炭酸カルシュウムとフッ化カルシュウム(フッ素)があり、炭酸カルシュウムは硬いのですが酸に弱く、すぐ溶け出してしまいます。フッ素は自然界に存在している物質でお茶、ウーロン茶、紅茶などに含まれています。フッ化カルシュウムは炭酸カルシュウムほどは硬くありませんが酸には強いので虫歯予防には非常に有効でWHOでも推奨しています。生涯を通じて最もむし歯予防に有効な物質です。またフッ化物は水などといっしょに飲み歯の内側から強くする方法とペーストとして歯に塗布して強化する方法があります。フッ素を積極的に摂ることをお勧めします。 |
|
---|
唾液は口の中をうるおして、食事や発声をスムーズにする働きがあるのはご存知かと思いますが、他にも消化作用、溶解作用、洗浄作用、抗菌作用、pH緩衝作用、保護作用、再石灰化作用があります。 特に、むし歯予防には抗菌作用、pH緩衝作用(唾液が酸を中和する力)、再石灰化作用は欠かすことができません。我々が日常摂っている食品は酸性の物がほとんどで、食事をするとエナメル質表面は脱灰されカルシュウムが解け出してしまいます。しかし、唾液中には、血液で運ばれたカルシュウムがあり、エナメル質表面はこのカルシュウムを吸収して再石灰化をし元どおりのエナメル質に修復します。 むし歯が一本でも出来たということはこの再石灰化のサイクルが行われなくなったということになりますから、唾液の検査をして再石灰化が破壊された原因を知って、むし歯にならないように生活改善をしないと、次から次へとむし歯を発症することになります。 抗菌作用を高めるには、唾液中のリゾチーム、ラクトフェリン、IgA(免疫抗体)などの濃度をあげる必要があります。それには普段からミネラルの多く含まれる食品を摂ることをお勧めします。 pH緩衝作用を高めるためには、飲食と飲食の間隔は3時間ほど空けることが理想で、その間に口に入れるのは水かお茶にするのが良いです。頻繁に食事をすると口の中はいつも酸性状態となりエナメル質はいつも脱灰されたままになり虫歯がどんどん進行してしまいます。飲食回数が5回を越えると虫歯になる危険が非常に高くなります。 唾液中のカルシュウム濃度を高めるには、小魚やチーズなどを意識的に取るのが良いでしょう。最近簡単に飲むだけで栄養のとれる食品やサプリメントが売られていますがこれらで食事を済ませてしまうと唾液の分泌が少なくなってしまいます。唾液は口腔内に刺激を与えることにより分泌されるので、咬む回数の少ない食事は唾液の持つ他の作用も引き出せないことになるので、身体全体のバランスを崩すことになります。 健康で、会話を楽しむ毎日が送れるように唾液力を高める食事とお口の健康を心がけることが大切です。 |
|
---|